『般若心経』に
「度一切苦厄」という言葉が
あります。
「苦厄」の
「苦」は、
単なる苦しみというより
思い通りにならないことです。
「厄」はわざわい。
「度」は、
渡すという意味で、
「度一切苦厄」は、
彼岸、
つまりあの世に
あらゆる自分が思いどおりにならない苦しみや
わざわいを渡すことで
安らかな気持ちにさせてくれるという
意味になります。
思いどおりにならないことを
思いどおりにするには、
思いをかなえて
文字通り
思いどおりにすることと、
思いどおりにしようと
思わなくなる
という
ふたつの方法があります。
いま世の中には
自分の思いどおりにしようという
そんなある意味不遜な
思考や行動が蔓延していないでしょうか。
それは、
国家単位、
つまり一国主義の
根本の思想のひとつでも
あるでしょう。
一方で、
自分の思いどおりにならないと
悩み苦しんでいるとき、
そもそも
思いどおりにしようとすること自体を
やめてしまえば
その悩み苦しみも
消えるともいえるのです。
この『般若心経』の
「度一切苦厄」という教えこそ、
いま私たち日本人が
胸に抱くべき、
さらに、
世界に伝えるべき
教えのひとつでは
ないでしょうか。
「度一切苦厄」の
言葉を唱えることで、
あらゆる
悩みや苦しみ、
思いどおりにしたいという
こだわりや執着から
解き放たれて、
スッと
楽な気持ちを
取り戻せるのでは
ないでしょうか。